GeckoFlag コラム

プロジェクト管理・課題管理ツール選びのヒント

連載「AIと働くチームのタスク管理」第6回

記録があると、AIがもっと手伝える これからのタスク管理とAIの分担

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連載「AIと働くチームのタスク管理」第6回 記録があると、AIがもっと手伝える

この連載について

「AIと働くチームのタスク管理」は、ChatGPTやGeminiを仕事で使い始めた、制作やクライアントワークの小さなチームに向けた、全6回の連載です。どの回からでも読めます。

  1. AIを使い始めたら、タスク管理ツールはいらなくなる?
  2. 課題は「作ること」より「決めること」で立てる
  3. 「判断待ち」を見えるようにする
  4. AIが出した案は「完成品」ではなく「判断材料」
  5. クライアントの「確認待ち」で止まらない進め方
  6. 記録があると、AIがもっと手伝えるこの記事

金曜日の夕方。ディレクターは、クライアントに送る週次報告を書き始めました。今週決まったこと、まだ返事を待っていること、来週決めてほしいこと。

以前なら、チャットとメールをさかのぼって、1時間かけてまとめていました。今は、課題の一覧に決まったことと理由が残っています。必要なところをAIに渡すと、数分で下書きが出てきました。

手直しをして送るまで、15分。記録を残してきたことが、思わぬところで効いてきました。

この連載では、決める課題を立て、判断待ちを見えるようにし、選んだ理由やクライアントとの合意を残してきました。

最終回は、こうした記録が、AIに仕事を手伝ってもらうための材料にもなることを取り上げます。AIに任せられること、渡す情報の線引き、これからタスク管理のツールに残すものを整理します。

※この記事は、GeckoFlagの開発元が書いています。

記録があるとAIに頼めること

AIは、材料がないところから正しい答えを出すことはできません。逆に言えば、材料がそろっていれば、まとめたり、分けたり、下書きを作ったりするのは得意です。

判断と合意の記録が残っていると、次のようなことをAIに頼めるようになります。

  • 打ち合わせのメモから、課題の下書きを作る:メモや文字起こしから、このあと必要なことを洗い出してもらいます。
  • 課題の一覧から、週次報告を下書きする:決まったこと、確認中のこと、来週決めることに分けてまとめてもらいます。
  • 「なぜこうなった?」を探す:残しておいた決定の理由から、経緯をまとめてもらいます。
  • 次に決めることを洗い出す:決まったことと残っている作業から、まだ決まっていないことを挙げてもらいます。

どれも、記録がなければ頼めないことです。チャットの中に散らばったやりとりを渡しても、AIは何が決まったのかを正しく読み取れません。

たとえば、打ち合わせのメモから課題を作る場合

30分の打ち合わせの文字起こしをAIに渡すと、課題の下書きが10件ほど出てくることがあります。そのうち、そのまま使えるのは半分くらい、ということも珍しくありません。残りは、ひとつの課題にまとめたり、決める人を直したり、ほかの課題と重なっていて消したりします。

それでも、一から書き出すよりは、ずっと早く終わります。大事なのは、AIの下書きを「たたき台」として扱い、最後は人が決めることです。

打ち合わせのメモから課題を作る

打ち合わせのあと、メモから課題を起こす作業は、AIに手伝ってもらいやすい仕事のひとつです。手順は次のとおりです。

  1. 打ち合わせのメモや文字起こしを用意します。社名や個人名など、渡したくない情報は先に伏せておきます。
  2. 第2回の型にそって、「決めること」と「作ること」に分けて出してもらいます。
  3. 出てきた下書きを人が見て、必要なものだけを選んで登録します。

依頼文は、たとえば次のように書きます。

依頼文の例

次の打ち合わせのメモから、このあと必要なことを洗い出してください。

  • 「決めること」と「作ること」に分けてください。
  • 「決めること」には、選択肢、決める人の候補、期限の候補を添えてください。
  • メモに書かれていないことは推測せず、「不明」と書いてください。

このように、まとめて洗い出すのは普段使っているAIサービスで行い、ツールへの登録は1件ずつ確かめながら行うのがおすすめです。

AIが挙げる「決める人」や「期限」は、あくまで候補です。メモの言い回しから推測していることもあります。だれが決めるのか、いつまでに決めるのかは、人が確かめてから登録します。

課題の一覧から報告を下書きする

クライアント向けの週次報告も、課題の一覧があれば下書きを作れます。

  1. 報告に必要な課題だけを書き出します。案件と関係のない課題や、社内だけのやりとりは外します。
  2. AIに渡して、「今週決まったこと」「クライアントに確認中のこと」「来週決めること」に分けてまとめてもらいます。
  3. 人が内容を確かめてから送ります。

依頼文の例

次の課題の一覧から、クライアント向けの週次報告の下書きを作ってください。

  • 「今週決まったこと」「クライアントに確認中のこと」「来週決めること」の3つに分けてください。
  • 決まったことには、理由を1行添えてください。
  • 一覧に書かれていないことは、書かないでください。

第3回で、ステータスを「社内確認待ち」「クライアント確認待ち」のように分けておくと、AIもまとめやすくなります。ステータスの分け方が、報告の分け方とほぼ対応するからです。

AIに渡す情報の線引き

記録がAIの材料になる一方で、渡してはいけない情報もあります。渡す前に、次のことを確かめておきます。

  • 契約と社内のルール:クライアントとの契約(秘密保持など)や社内の決まりで、外部のサービスに情報を送ってよいかを先に確認します。
  • 伏せる情報:社名、個人名、金額、未公開の情報などは、渡す前に伏せるか、別の言葉に置き換えます。
  • AIサービスのデータの扱い:入力した内容がどう扱われるか(学習に使われるかどうかなど)は、サービスやプランによって違います。使うサービスの設定と規約で確かめておきます。
  • 丸ごと渡さない:管理ツールの中身をすべて渡すのではなく、その作業に必要な範囲だけを選んで渡します。

線引きに迷ったら、「この内容をクライアントに見られても困らないか」を目安にします。困るものは、渡さないか、伏せてから渡します。

これからのタスク管理ツールに残すもの

AIと組み合わせることを考えると、ツールに残すものは、これまでとは少し変わります。

残すもの 残さなくていいもの
公開日・納期などの期限細かな作業の分解と、作業ごとの見積もり時間
決める人と、決まったことAIが出した案のすべて
決めた理由AIとのやりとりの全文
クライアントとの合意と、その日付報告のためだけの報告
外注先・他部署との受け渡し―

左の列は、人が判断した結果です。あとから人が読んでも、AIが読んでも役に立ちます。右の列は、必要になればまた作れるもの、またはAIに任せられるものです。

記録の量を増やす必要はありません。判断と合意を、決まった場所に残す。それだけで、AIに頼めることが増えていきます。

GeckoFlagでの実践例

GeckoFlagには、文章やスクリーンショットから入力内容をAIが提案する「AIで作成」の機能があります(v1.9.0以降)。この連載で紹介した使い方と組み合わせると、次のようになります。

打ち合わせのメモから課題を作る

課題の追加画面で「AIで作成」を開き、打ち合わせのメモや依頼のメールを貼り付けます(最大4,000文字)。管理者が画像の読み取りを許可している場合は、チャットのやりとりを、スクリーンショットのまま添付することもできます。

AIは、その課題の課題名・説明・課題タイプ・ステータス・優先度・担当者・開始日・期限日を提案します。1回の操作で提案されるのは、いま作っている課題1件分の入力内容です。提案は「項目/現在の値/提案値」の一覧で表示され、チェックした項目だけがフォームに入ります。保存するのは人です。

課題タイプやステータスは、管理者が登録した選択肢の中から選ばれます。担当者は、文章に名前が出てこなければ推測で割り当てません。

課題の追加画面の「AIで作成」で表示される提案の一覧。項目ごとに現在の値と提案値が並び、反映する項目にチェックを入れられる
「AIで作成」の提案の一覧。反映したい項目を選んでからフォームに入れます(画面例:GeckoFlag)※GeckoFlagは15言語に対応しています。

第2回のテンプレートを、AIの出力にも使う

管理者は、「課題の説明」「コメント本文」「プロジェクトの説明」「Wikiの本文」の欄ごとに、AIの出力テンプレートを登録できます。「課題の説明」に、第2回で紹介した項目(決めたいこと・止まっているもの・選択肢・決める人・期限・決まったこと・理由)を見出しとして登録しておくと、AIはその見出しの順番で説明を書きます。メモに情報がない見出しは、空欄で埋めずに省きます。

なお、テンプレートが使われるのは「AIで作成」を使ったときだけです。手で課題を作るときに、説明欄へ自動で入るわけではありません。

返事を記録する・決定事項をまとめる

コメント欄の「AIで作成」は、その課題の内容と直近のコメントを踏まえて、コメントの本文を作ります。「クライアントからB案で決定と返事があった。ステータスを完了にして」のように指示すると、本文に加えて、ステータスなどの変更もあわせて提案されます。状態の変更が反映されるのは、自分でチェックを入れたときだけです。

Wikiでは、素材の文章から新しいページを作るほか、第4回で紹介した「決定事項」のページに、追記や整理を頼むこともできます。このとき、いま入っているWikiの本文もAnthropic社に送られます。また、提案を反映すると本文全体が置き換わるので、反映する前にプレビューで確かめます。

週次報告は、必要な課題だけを選んで渡す

GeckoFlagの画面には、課題の一覧全体から報告書を自動で作る機能はありません。週次報告の下書きを作るときは、管理者が課題をCSVで書き出すか、報告に必要な課題を写し取って、必要な部分だけを普段使っているAIサービスに渡します。何を渡すかは、自分で選べます。

なお、v1.11.0で追加された「Claude連携」を使うと、Claudeデスクトップアプリとの会話からGeckoFlagを操作できます。「今週のレポートを書いて」のように頼むと、Claudeが課題を検索して読み、まとめを作ります。この場合も、Claudeが読んだ課題などの内容は、会話の一部としてAnthropic社に送られます。

AIで作った下書きをCSVで取り込むこともできますが、取り込めるのは管理者だけで、取り込みは新規作成だけです。登録されていないステータスや担当者を指している行は、取り込まれずに飛ばされます。また、CSVをExcelで保存し直すと日付の形式が変わり、取り込めないことがあります。整えるときはテキストエディタを使います。

送られる情報と、使う前に確かめること

  • 送られるもの:「AIで作成」に入力した文章や添付した画像、今日の日付や言語、課題タイプなどの選択肢の名前、プロジェクトメンバーの名前などが、Anthropic社のAPIに送られます。コメントでは、その課題の説明と直近のコメントも送られます。
  • 送られないもの:メールアドレス、パスワード、すでに添付されているファイル、ほかの課題やプロジェクトの内容は送られません。
  • GeckoFlagには残らない:入力した文章やAIの応答は、フォームに反映して保存した内容を除き、GeckoFlagには保存されません。Anthropic社での扱いは、同社の商用規約に従います。
  • 必要なもの:ご自身で発行したAnthropicのAPIキーが必要です。利用料はAnthropic社に直接支払い、GeckoFlagの価格には含まれません。GeckoFlagを置いたサーバーから api.anthropic.com に接続できることも必要です。使えるのは、管理者が許可したユーザーだけです。1日の利用回数に上限を設けることもできます。設定の手順はClaude APIの設定方法にまとめています。

GeckoFlagは、自分たちのサーバーに入れて使うセルフホスト型です。課題やコメントのデータは自分たちのサーバーに置かれ、AIに送るのは「AIで作成」かClaude連携を使ったときだけです。その分、サーバーの管理は使う側の責任になります。また、チャットツールやGitHubなどとつなぐ機能や、Webhookはありません。外部のツールから接続できるのは、APIトークンを使うClaude連携だけです。

この連載で紹介した使い方は、デモで試せます。料金は料金ページをご覧ください。

連載のまとめ

6回の連載では、AIと働く制作チームのタスク管理について、次のことを書いてきました。

  1. 第1回:AIで速くなったのは「作る」部分。時間のかかる場所が「決める」部分に移った
  2. 第2回:課題は「作ること」より「決めること」で立て、決める人・期限・理由を残す
  3. 第3回:ステータスを「だれを待っているか」で分け、判断待ちを見えるようにする
  4. 第4回:AIの案は判断材料。人に見せるのは絞った案だけで、選んだ理由を残す
  5. 第5回:クライアントへの確認は、決めてほしいことの一覧にして、期限付きでまとめて出す
  6. 第6回:判断と合意の記録は、AIに仕事を手伝ってもらうための材料にもなる

AIで変わったのは、仕事の量ではなく、時間のかかる場所です。だからこそ、判断と合意の記録が要ります。そして、その記録を残しておくと、AIに頼めることが増えていきます。AIに渡す範囲を選ぶのも、最後に決めるのも人です。

これからツールを選ぶときは、AI機能の多さだけで比べないことをおすすめします。判断を記録しやすいか、クライアントや外部の人が参加しやすいか、データをどこに置くか、AIに何を渡すかを自分で選べるか。こうした点も見てください。AI機能の料金の違いは、「プロジェクト管理ツールのAI機能はいくらかかる?」で比べています。

タスク管理のツールは、AIがあっても不要にはなりません。残すものを「作業」から「判断と合意」に変えると、AIと組み合わせて、仕事はもっと進みやすくなります。