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プロジェクト管理・課題管理ツール選びのヒント

連載「AIと働くチームのタスク管理」第1回

AIを使い始めたら、タスク管理ツールはいらなくなる? 制作の現場で変わったこと

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連載「AIと働くチームのタスク管理」第1回 AIを使い始めたら、タスク管理ツールはいらなくなる?

この連載について

「AIと働くチームのタスク管理」は、ChatGPTやGeminiを仕事で使い始めた、制作やクライアントワークの小さなチームに向けた、全6回の連載です。どの回からでも読めます。

  1. AIを使い始めたら、タスク管理ツールはいらなくなる?この記事
  2. 課題は「作ること」より「決めること」で立てる
  3. 「判断待ち」を見えるようにする
  4. AIが出した案は「完成品」ではなく「判断材料」
  5. クライアントの「確認待ち」で止まらない進め方
  6. 記録があると、AIがもっと手伝える

月曜日の朝、新しいサイト制作の案件が動き出しました。ディレクターがAIに条件を伝えると、トップページのワイヤーのたたき台が3パターン、キャッチコピーの案が20本、数分で出てきました。

以前なら、ここまでで丸1日かかっていた作業です。ところが、案件が終わる日は前と変わりません。社内で方向を決めるのに半日、クライアントの返事を待つのに1週間。振り返ってみると、止まっていたのは「作る」ところではありませんでした。

「AIがここまでやってくれるなら、タスク管理のツールって、もういらないんじゃない?」

AIで作業は速くなりました。それなのに、案件が早く終わるようになった実感は、あまりありません。

この記事では、AIを使い始めた制作の現場で、何が変わり、何が変わらなかったのかを整理します。先に結論を書くと、タスク管理のツールはいらなくなりません。変わるのは、記録する中身です。「作業」の一覧から、「判断と合意」の記録へと移っていきます。

※この記事は、GeckoFlagの開発元が書いています。

AIで速くなったのは「作る」部分

生成AIを仕事で使うことは、もう特別なことではありません。総務省の令和8年版 情報通信白書(2026年7月公表)によると、2025年度の調査で、生成AIを1つ以上の業務で使っている日本の企業は86.4%でした。前の年度の55.2%から、大きく増えています。

※AIの活用の方針を「わからない」と答えた企業を除いた割合です。

制作の現場でも、AIで速くなった作業はたくさんあります。

  • ワイヤーのたたき台:ページの目的と載せたい内容を伝えると、構成の案がすぐに出てきます。
  • コピーの案:キャッチコピーやボタンの文言を、10本、20本とまとめて出せます。
  • 画像の差し替え案:メインビジュアルの色や雰囲気を変えた案を、何枚も作れます。
  • 打ち合わせメモの要約:長い文字起こしから、決まったことと宿題を抜き出せます。

以前は半日かかっていた作業が、数分で形になる。これは大きな変化です。

作業の時間が読めなくなった

その一方で、困ったことも起きています。作業にかかる時間が、読めなくなったのです。

1回目で使える案が出ることもあれば、何度出し直しても、しっくりこないこともあります。指示の言葉を変え、参考の資料を足し、また出し直す。気づけば2時間たっていた、ということも珍しくありません。

これまでは、「この作業は3時間」と見積もり、終わった時間で進み具合を見てきました。AIが入ると、この見積もりが当てになりません。作業の時間を単位にした見積もりや進み具合の管理は、少しずつ合わなくなってきています。

たとえば、キャッチコピーの場合

AIに条件を伝えて、コピーの案を30本出すのにかかるのは15分ほどです。そこから社内で3本に絞るのに1時間半。クライアントに出して1本に決まるまでに、4日かかります。

時間がかかっているのは、案を「作る」ところではありません。「選ぶ」ところと、「決めてもらう」ところです。

速くならなかったのは「決める」部分

AIで案が増えると、そのぶん選ぶ回数も増えます。20本のコピーから1本を選ぶのは、3本から選ぶより時間がかかります。

そして、次のようなことは、AIを使っても短くなりません。

  • 社内で方向を決める:どの案で進めるかを、ディレクターとデザイナーで話し合って決めます。
  • クライアントに確認してもらう:案を見てもらい、返事をもらいます。先方の社内で回覧が必要なこともあります。
  • 修正を受けるかどうかを判断する:届いた修正の依頼が、最初に約束した範囲に入るのかどうかを決めます。

どれも、人が考え、人が答えを出すことです。AIは判断の材料をそろえてくれますが、決めるのは人です。

コーポレートサイトのリニューアル。デザイン案は、AIでたたき台を作ったおかげで、2日でそろいました。

ところが、クライアントに送ったあと、返事が来ません。先方の担当の方は、役員に見せてから返事をしたいとのこと。その確認が終わるまで、案件は1週間止まったままでした。

遅れの原因は、作業ではありませんでした。だれかの判断を待っていたのです。

案件が止まっているとき、その理由を一つずつ見ていくと、作業の遅れより、だれかの判断待ちであることが多いはずです。社内のだれかの返事なのか、クライアントの返事なのか。AIで作業が速くなったぶん、この「待ち」が前よりも目立つようになりました。

「作業」を細かく管理する意味は薄れていく

これまでのタスク管理は、仕事を作業に分けて、それぞれに時間と担当と期限を付けるやり方が中心でした。「ワイヤー作成、4時間、Aさん、水曜まで」といった具合です。

AIで作業の時間が短くなり、しかも読めなくなると、この細かい管理の意味は薄れていきます。4時間と見積もった作業が20分で終わることもあれば、AIの出し直しで半日かかることもあるからです。

代わりに記録しておきたいのは、次のようなことです。

  • 何を決めるのか
  • だれが決めるのか
  • いつまでに決めるのか
  • 何に決まったのか

これまでとこれからを並べると、次のようになります。

これまで記録してきたもの これから記録したいもの
作業にかかる時間判断の期限
作業の担当者決める人(社内か、クライアントか)
進捗率返事を待っている件数
終わった作業決まったことと、その理由

作業の記録が要らなくなる、という意味ではありません。だれが何をしているかは、これからも見えていたほうが安心です。ただ、案件を前に進めるために本当に追いかけたいのは、「これから記録したいもの」のほうです。

それでもツールが要る理由

「決めることが大事なら、話し合えば済むのでは」と思うかもしれません。それでも、ツールは要ります。理由は3つあります。

1日付と受け渡しは、これまでどおり管理が要る

公開日や納期は、AIがあっても動きません。クライアントの確認や、外注先のカメラマンやコーダーとの受け渡しも、これまでどおりあります。いつ、だれに、何を渡すのか。ここは、AIを使い始めても変わらず管理が必要です。

2案が増えるほど、「結局どれにしたんだっけ」が起きる

AIで案を出せば出すほど、手元には案がたまります。コピーが30本、バナーが10枚。その中から、どれを選んだのか。なぜその案にしたのか。

決めたときは覚えていても、2週間後には思い出せません。クライアントから「やっぱり最初の案で」と言われたとき、最初の案がどれだったのか、なぜ外したのかをたどれないと、また一から話し合うことになります。

3チャットの中だけでは、決まったことが流れる

多くのチームでは、判断のやり取りをチャットでしています。「B案でいきましょう」「了解です」。手軽で速いのですが、決まったことは、すぐにほかの話題に押し流されます。

あとから探しても、どのメッセージで決まったのかが見つかりません。決まったことを、決まった場所に残しておく。そのための道具として、タスク管理のツールは、AIを使うチームでも役に立ちます。

関連チャットで頼まれごとが流れる理由は、初心者向けの連載「はじめてのプロジェクト管理ツール」の第3回「チャットやメールの頼まれごとは、なぜ流れる?」で詳しく取り上げています

AIを使うチームのタスク管理ツールは、「作業の一覧」から、「判断と合意の記録」へと役割を広げていきます。

この連載で扱うこと

この連載では、AIを使う制作チームが、判断と合意をどう記録していくかを、6回に分けて書いていきます。第2回からの内容は、次のとおりです。

  • 第2回「課題は『作ること』より『決めること』で立てる」:「トップページのデザインを作る」を、「メインビジュアルの方向性を2案から決める」のような、決めることの単位に分けます。
  • 第3回「『判断待ち』を見えるようにする」:判断待ちを、社内待ちとクライアント待ちに分けて見ます。定例の打ち合わせは、「今週クライアントに決めてもらうこと」から始めます。
  • 第4回「AIが出した案は『完成品』ではなく『判断材料』」:AIで出した案のうち、どれを残し、どれを捨てたかを記録します。「最初の案に戻して」と言われても、理由をたどれるようにします。
  • 第5回「クライアントの『確認待ち』で止まらない進め方」:確認の依頼をチャットで小出しにせず、期限を付けてまとめて出す方法と、クライアントをツールに招くか、一覧を送るかの使い分けを取り上げます。
  • 第6回「記録があると、AIがもっと手伝える」:打ち合わせのメモから課題の下書きを作る、課題の一覧から週次の報告を下書きするなど、記録をAIに生かす方法を取り上げます。顧客の情報をどこまでAIに渡すかの線引きも考えます。

なお、タスク管理のツールに付いているAIの機能の料金は、別の記事「プロジェクト管理ツールのAI機能はいくらかかる?」で比べています。

まとめ

  • AIで速くなったのは、ワイヤーやコピーの案などを「作る」部分
  • 社内の方向決め、クライアントの確認、修正の判断など、「決める」部分は速くならない
  • 案件が止まる理由は、作業の遅れより、だれかの判断待ちであることが多い
  • 記録したいものは、作業の時間や進捗率から、判断の期限、決める人、決まったこととその理由へ移っていく

AIで変わったのは、仕事の量ではなく、時間のかかる場所です。タスク管理のツールは、作業の一覧から、判断と合意の記録へと役割を広げることで、AIと組み合わせたときに仕事を進めやすくしてくれます。

次回は、課題を「作ること」ではなく「決めること」で立てる方法を取り上げます。この連載の実践の例は、第2回から、GeckoFlagの画面を使って紹介していきます。