チャットやメールの頼まれごとは、なぜ流れる? 抜け漏れが起きる理由と、「話す場所」と「頼む場所」の分け方
この連載について
「はじめてのプロジェクト管理ツール」は、ツールを使ったことがない方に向けた、全6回の連載です。どの回からでも読めます。
- プロジェクト管理ツールとは? あると仕事の何が変わるのか
- Excelのタスク管理は、どこで限界が来る?
- チャットやメールの頼まれごとは、なぜ流れる?この記事
- 少人数のチームに、プロジェクト管理ツールは必要?
- プロジェクト管理ツールが使われなくなるのはなぜ?
- はじめてのプロジェクト管理ツール、何を見て選ぶ?
展示会まで、あと2週間。ブースを作る施工業者から、メールが届きました。「図面の寸法に誤りがあるため、修正版を水曜までにいただけますか」。
メールはCCで、準備に関わる5人全員に届いています。全員が読みました。そして全員が、「図面を作った人が返すだろう」と思いました。
水曜の夕方、業者から2通目のメールが届きます。「ご確認いただけましたでしょうか」。
チャットやメールで頼んだこと、頼まれたことが、いつの間にか流れてしまう。多くの職場で起きていることです。この記事では、頼みごとが流れる理由と、チャットの工夫で防げる範囲、そしてツールに残すと何が変わるのかを説明します。
※この記事は、GeckoFlagの開発元が書いています。
チャットとメールは、よくできた連絡の道具
はじめに断っておくと、チャットもメールも、連絡の道具としてよくできています。
- チャットは速い:思いついたことを、すぐに相談できます。短い返事で話が進みます。
- メールは社外とつながる:取引先や業者とのやり取りは、今もメールが中心です。
- だれでも使える:新しく覚えることが、ほとんどありません。
問題は、道具の出来ではありません。「話すための道具」で、「頼みごとを最後まで見届ける」ことまで受け持とうとするところに、無理が出てきます。
頼まれごとが流れる6つの理由
頼みごとが流れるのは、だれかが怠けているからではありません。チャットやメールの作りに、流れやすい理由があります。
1新しい話題に押し流される
チャットもメールも、新しいものが上や下に積み重なっていきます。金曜の締め切りを頼んだメッセージも、そのあとに別の話題が続けば、画面の外へ流れていきます。
読んだときは覚えていても、数日後に見返す仕組みがありません。
サイン「あれ、どこで頼まれたんだっけ」と、さかのぼって探すことが多い。
2「了解です」で会話が終わる
頼まれた側が「了解です」と返すと、会話はそこで終わります。でも、頼みごとはまだ終わっていません。
チャットには、「この件は終わった」「まだ途中」という印を付ける場所がありません。終わったかどうかを知るには、もう一度聞くしかありません。
サイン「あの件、どうなりました?」という確認のメッセージが多い。
3短い言葉で、大事なことが省かれる
チャットは、短く書くのがふつうです。「例の件、明日までに」「いつもの感じでお願いします」。頼む側は、相手も分かっているつもりで、大事なことを省きます。
頼まれた側も、聞き返すのを遠慮して、分かったつもりで「了解です」と返します。何を、どこまで、どんな形で渡せばいいのか。肝心な点が、お互いに書かれないまま進みます。
展示会の例なら、「招待状、いつもの感じで」。去年の文面を使うのか、宛先は去年と同じでいいのか、紙で送るのかメールで送るのか。食い違いに気づくのは、たいてい仕上がったものを見せたときです。
サイン仕上がったものを見て、「そういう意味じゃなかった」となることがある。
4宛先が多いと、だれの仕事か分からなくなる
冒頭の場面のように、CCや大人数のグループで届いた頼みごとは、全員が読んで、全員が「だれかがやるだろう」と思いがちです。
宛先に名前があることと、担当していることは、別のことです。
サイン「てっきり○○さんが返していると思っていました」が起きる。
5頼みごとが、あちこちに散らばる
取引先からはメール、社内からはチャット、上司からは口頭、急ぎは電話。頼みごとの入り口が、いくつもあります。
自分が抱えている頼みごとを全部見ようとすると、受信箱、チャットの各グループ、手帳のメモを見て回ることになります。
サイン自分のやることを、紙やメモに書き写して管理している。
6締め切りが文章の中に埋もれる
「来週あたりで」「展示会の前までに」「できれば早めに」。チャットの頼みごとは、締め切りが文章の一部として書かれがちです。
日付として残っていないので、近づいても、だれも気づきません。
サイン締め切りの当日や前日に、急に思い出して慌てることがある。
共通する原因
6つの理由は、同じところから来ています。チャットやメールは「やり取り」を時間の順に並べる道具で、頼みごとの「中身」「担当」「締め切り」「終わったかどうか」を、きちんと書いて持っておく場所がないのです。
連載の第1回で紹介した「頼んだことが流れていく」場面も、第2回で紹介した「表に書いても本人に伝わらない」問題も、根っこは同じです。
チャットの工夫で、どこまで防げるか
ツールを入れる前に、チャットやメールの使い方を工夫して防ぐ方法もあります。
- 印を付ける:多くのチャットやメールには、メッセージに印を付けたり、あとで知らせてもらったりする機能があります。頼まれたものに印を付けておけば、流れても見つけられます。
- 名前を呼んで頼む:グループで頼むときは、「○○さん、お願いします」と相手を1人に決めます。宛先が多くても、だれの仕事かがはっきりします。
- 省かずに書く:「例の件」「いつもの感じで」ではなく、何を、どんな形で渡してほしいかまで書きます。頼まれた側も、分からない点はその場で聞き返します。
- 日付で書く:「来週あたり」ではなく、「10月20日(火)まで」と書きます。
- 終わったら返す:頼まれた側は、終わったときに「終わりました」とひと言返します。
どれも、今日から始められる工夫です。人数が少なく、頼みごとの数も多くないなら、これで十分に回ることもあります。
工夫だけでは届かないところ
ただし、これらの工夫には限りがあります。
1つは、印は自分にしか見えないことです。自分の頼まれごとは追えても、チーム全体で「今、だれが何を抱えているか」は見えません。全体をまとめる人は、やはり聞いて回ることになります。
もう1つは、全員が同じように続けないと崩れることです。1人でも日付を書き忘れたり、「終わりました」を返し忘れたりすると、そこから流れていきます。
「話す場所」と「頼む場所」を分ける
流れる問題を根本から減らすには、場所を分けるのがいちばんの近道です。
- 話す場所:チャットやメール。相談、確認、雑談、取引先とのやり取り。
- 頼む場所:プロジェクト管理ツール。決まった頼みごとを、担当と締め切りを付けて1件ずつ残す。
チャットやメールを、やめる必要はありません。相談はこれまでどおりチャットで行い、「決まったこと」だけをツールに移します。
流れは3つの手順だけ
冒頭の、施工業者からの図面の件で考えてみます。
- メールやチャットで受け取る:業者から修正の依頼が届く。必要なら、チャットで「だれが対応するか」を相談する。
- ツールに1件登録する:「ブース図面の寸法を修正して業者に返す」。担当は1人、締め切りは水曜。説明の欄には、業者のメールにあった修正箇所を書き写しておく。
- チャットには、ひと言だけ返す:「ツールに登録しました。担当は○○さんです」。
あとの経過は、ツールのその1件に書き込んでいきます。終わったら、状態を「完了」にします。
最初に決めておくこと
場所を分けるには、チームの約束が要ります。最初は、次の2つだけで十分です。
- 頼みごとは、口頭やチャットで頼んでも、必ずツールに1件登録する
- 社外からメールで届いた依頼も、受け取った人がツールに登録する
約束が守られずに、ツールが使われなくなる。これもよくある失敗です。
連載この話は、第5回「プロジェクト管理ツールが使われなくなるのはなぜ?」で詳しく取り上げています
ツールに残すと、何が変わるか
頼みごとをツールに残すと、先ほどの6つの理由は、それぞれ次のように変わります。
| 流れる理由 | ツールに残すと |
|---|---|
| 新しい話題に押し流される | 頼みごとは、終わるまで一覧に残り続けます |
| 「了解です」で会話が終わる | 「進めている」「終わった」といった状態が付き、聞かなくても分かります |
| 短い言葉で、大事なことが省かれる | 1件ごとに説明の欄があり、何を、どこまで、どんな形で渡すかを書いておけます。分からない点は、その1件に書き込んで聞けます |
| だれの仕事か分からなくなる | 1件ごとに担当者を決めます。宛先が何人いても、担当ははっきりします |
| あちこちに散らばる | どこで頼まれても、行き先はツールの1か所です。自分が担当の頼みごとを一覧できます |
| 締め切りが文章に埋もれる | 締め切りを日付の欄に入れるので、近いものから並べられます |
もう1つ変わるのが、知らせ方です。多くのツールでは、登録や書き込みのときに、関係する人へ知らせを送れます。「表に書いたので見ておいてください」と、チャットで伝え直す必要がなくなります。
まとめ
チャットやメールで頼みごとが流れるのは、だれかが怠けているからではありません。話すための道具には、頼みごとの「中身」「担当」「締め切り」「終わったかどうか」を、きちんと書いて持っておく場所がないからです。
次のサインが出ていたら、頼みごとの置き場所を考える時期です。
- 頼まれた場所を探して、チャットやメールをさかのぼっている
- 「あの件、どうなりました?」という確認が多い
- 仕上がったものを見て、「そういう意味じゃなかった」となる
- 「てっきり○○さんがやっていると思っていました」が起きる
- 自分のやることを、紙やメモに書き写している
- 締め切りの直前に、急に思い出して慌てる
まずはチャットの工夫から始め、それでも流れるようなら、相談はチャット、頼みごとはツールと、場所を分けてみてください。
試してみたくなったら
「頼みごとの置き場所を作りたい」と思った方へ、選択肢を1つ紹介します。この記事の画面例に使った、GeckoFlagです。
- 買う前に画面を確かめられます:デモを公開しています。
- 担当者は1件に1人です:だれの仕事かが、はっきりします。ダッシュボードには、自分が担当する課題の一覧が並びます。
- 知らせる相手を選んで送れます:課題を登録するときやコメントを書き込むときに、知らせるメンバーを選ぶと、メールで知らせが届きます。手順はマニュアルの課題へのコメントにまとめています。
- 画面の案内に沿って導入できます:ファイルをサーバーに置き、ブラウザに表示される案内に沿って入力していきます。コマンドの操作はありません。手順はマニュアルのインストール手順にまとめています。
- 4,800円の買い切りです:月額の料金はなく、人数が増えても追加の費用はかかりません。サーバーの費用は別に必要です。詳しくは料金ページをご覧ください。
なお、GeckoFlagには、SlackなどのチャットやGmailなどのメールと連携する機能はありません。相談はチャット、頼みごとはGeckoFlagと、場所を分けて使う形になります。
会社のホームページを置いているレンタルサーバーがあれば、そこに入れられる場合があります。必要な条件は、マニュアルの動作環境のページで確認できます。
※会社のドメインをお持ちであれば、多くのレンタルサーバーでは「geckoflag.○○.com」のようなサブドメインを作ってインストールできます。この場合、ドメインを新しく契約する必要はありません。
まずはデモで、最近チャットで頼まれたことを1件、登録してみてください。