GeckoFlag コラム

プロジェクト管理・課題管理ツール選びのヒント

AI時代のプロダクトの磨き方 「AIっぽい」と言われず、選ばれるものに仕上げる7つの実践

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AI時代のプロダクトの磨き方

文章も、画像も、デザインも、コードも。いまやAIを使えば、数分でそれらしいものが手に入ります。Webサイト、記事、アプリ、広告バナー。私たちのまわりには、AIの手を借りて作られたデジタル制作物があふれています。

その一方で、「AIっぽい」という言葉は、すっかり否定的な意味で使われるようになりました。どこかで見たようなデザイン、中身の薄い文章、不自然な画像。ユーザーはそうしたものを敏感に見分け、素通りし、ときには嫌悪感さえ抱きます。

では、AIを使わないほうがいいのでしょうか。答えははっきり「いいえ」です。AIはこれからも進化し続け、使わない理由はどんどんなくなっていきます。問われているのは、使うかどうかではなく、AIで作ったものを、選ばれるものにまで磨き上げられるかどうかです。

この記事では、AIを積極的に活用することを前提に、ユーザーに受け入れられるプロダクトに仕上げるために何をすべきか、何に注意すべきかを考えます。

この記事のポイント

  • AIは、ためらわず使うべき道具です。ただし、誰でも使えるので、使うこと自体はもう差別化になりません。
  • ユーザーが嫌っているのはAIではなく、平均的で、誰のためでもなく、細部が雑な「手抜きと無責任の気配」です。
  • AIには素材づくりと検証を任せ、問いを立てる・選ぶ・責任を持つことは人が担います。そのための7つの実践を紹介します。

※この記事は、GeckoFlagの開発元が書いています。

AIは、ためらわずに使うべき道具

まず前提として、AIの有用性ははっきりしています。

  • スピード:叩き台やラフを、数分で何パターンも出せる
  • 量と網羅性:考えられる選択肢を洗い出し、抜け漏れに気づかせてくれる
  • 検証:文章の誤字、コードの不具合、アクセシビリティの問題点などを指摘してくれる
  • 専門外の補助:自分の得意分野の外にある知識に、すぐ手が届く
  • 多言語化:翻訳の下訳や、各国向けの調整の手がかりになる

しかも、こうした能力は年々向上しています。少人数のチームや個人でも、かつては大きな組織でなければ扱えなかった規模の仕事に挑めるようになりました。これを使わない手はありません。

ただし、ここで一つ覚えておきたいことがあります。同じ道具は、誰にでも使えるということです。あなたが使えるAIは、競合も使えます。AIを使うこと自体は、もう差別化にはなりません。差がつくのは、AIが出したものに、その後なにを加えるかです。

なぜ「AIっぽさ」は嫌われるのか

ユーザーが「AIっぽい」と感じて離れていくとき、嫌っているのはAIそのものではありません。その制作物から伝わってくる、いくつかの「サイン」です。

どこかで見たことがある

AIの出力は、学習したデータの「もっともらしい平均」に寄りやすい性質があります。誰もが同じような指示で同じようなツールを使えば、結果も似通っていきます。均整はとれているのに、記憶に残らない。これが最初のサインです。

誰に向けたものか分からない

「誰にでも当てはまる」内容は、裏を返せば「誰のためでもない」内容です。読み手の状況や悩みに踏み込まず、一般論だけが並んでいると、ユーザーは「自分のことではない」と感じます。

それらしいのに、中身がない

見出しは整い、言葉はなめらか。けれど、具体的な数字も、実際の体験も、はっきりした結論もない。読み終えても何も残らない文章は、AIに限らず昔からありましたが、AIによってその量が一気に増えました。

細部が雑

画像の不自然な部分、意味のないアイコン、文脈に合わないボタンの文言、空っぽの状態やエラー時の配慮がない画面。細部の粗さは、「誰も最後まで見ていない」ことを伝えてしまいます。

こうしたサインが積み重なると、ユーザーは「このプロダクトは、自分のために手間をかけて作られていない」と受け取ります。つまり、嫌われているのはAIではなく、手抜きと無責任の気配なのです。

選ばれるプロダクトに共通すること

逆に、AIを活用していても選ばれるプロダクトには、共通する特徴があります。

一次情報がある

実際に使ってみた結果、現場で見たこと、ユーザーから聞いた声、自分たちが失敗から学んだこと。AIが持っていない情報は、それだけで価値になります。一次情報は、AIがどれだけ進化しても代わりに用意できないものです。

視点と判断がある

「誰のために作ったのか」「何を大事にして、何を捨てたのか」がはっきりしているプロダクトには、作り手の意志が感じられます。すべての人を満足させようとする平均的な答えではなく、特定の誰かに深く刺さる答えを選んでいます。

細部に意図がある

ボタンの言葉一つ、エラーメッセージ一つ、余白の取り方一つに、理由があります。ユーザーがつまずきそうな場面を先回りして考え、手当てをしている。こうした細部の積み重ねが、「ちゃんと作られている」という信頼につながります。

一貫性がある

文章の語り口、デザインのトーン、操作の感覚が、どこを見ても揃っている。AIに個別に作らせたパーツを寄せ集めただけでは、この一貫性はなかなか生まれません。

作り手の責任が見える

誰が作っているのか、問い合わせたら答えてくれるのか、継続的に改善されているのか。作り手の顔と責任が見えることは、ユーザーが安心して選ぶための大きな理由になります。

AIに任せること、人が持つこと

AIを使い倒しつつ選ばれるプロダクトに仕上げるには、役割分担をはっきりさせることが近道です。

工程 AIに任せられること 人が持つべきこと
企画選択肢の洗い出し、競合や事例の整理誰の、どんな場面のための制作物かを決める
制作叩き台・ラフ・下書きを大量に出すどれを採用し、何を捨てるかを選ぶ
仕上げ誤字、表記ゆれ、不具合の候補を挙げるトーンや細部を整え、一貫性をつくる
検証チェックリストに沿った網羅的な確認実際に使ってみて、体験として違和感がないか確かめる
公開後フィードバックの分類や要約何を直すかの優先順位を決め、責任を持って改善する

ポイントは、問いを立てること、選ぶこと、責任を持つことは人が手放さない、という点です。AIは優秀な作り手であり、優秀な検査役ですが、「これで世に出してよい」と決めるのは人の仕事です。

プロダクトを磨く7つの実践

1最初に「誰の、どんな場面か」を一文で決める

AIに何かを頼む前に、「誰が、どんな場面で、何に困っているときに使うものか」を一文で書きます。たとえば「初めてプロジェクト管理ツールを導入する、5人ほどの制作チームのリーダーが、上司に説明する材料を探しているとき」。この一文がぼやけていると、AIの出力も平均的なものになります。

2AIの初稿は「素材」として扱う

AIの最初の出力は、いわば平均値です。そこで止めてしまうと、どこかで見たようなものにしかなりません。初稿は完成品ではなく、削ったり組み替えたりする前の素材だと考えましょう。

関連AIが出した案から選び、選んだ理由を残す方法は、連載「AIと働くチームのタスク管理」の第4回「AIが出した案は『完成品』ではなく『判断材料』」で説明しています

3一次情報を足す

自分たちの体験、実際の数字、うまくいかなかった話、顧客がふと口にした言葉。こうした情報を一つでも加えるだけで、制作物は一気に「自分たちのもの」になります。

4削る

AIは、足すことが得意です。見出しを増やし、説明を重ね、念のための注意書きを加えていきます。だからこそ、人は削る判断を担います。伝えたいことに関係ない部分を思い切って落とすと、伝えたいことが際立ちます。

5細部に意図を入れる

ボタンやメッセージの言葉、データが空のときの表示、エラー時の案内、読み込み中の見せ方。ユーザーが実際に触れる細部ほど、AIの出力のままになりがちです。一つひとつ、「この場面でユーザーは何を感じるか」を考えて手を入れます。

6自分たちで使い、読み、声に出す

作ったものを、作り手自身がユーザーとして使ってみます。文章なら声に出して読む、アプリなら実際の業務で使ってみる。画面の上で眺めているだけでは気づかない違和感が、使ってみると見えてきます。見つけた違和感は、その場で記録して、一つずつ直していきます。

7自分たちの「型」と「使わないもの」を決める

語り口、デザインのトーン、よく使う言い回し、逆に使わない言い回しや表現を、チームで決めて共有しておきます。AIに渡す指示にもこれを反映させれば、出力の段階から自分たちらしさに近づけられます。ただし、型そのものが新しい「テンプレート」にならないよう、ときどき見直すことも大切です。

磨くときの注意点

「AIっぽさを消す」ことを目的にしない

大切なのは、AIを使った痕跡を隠すことではなく、ユーザーにとっての価値を加えることです。わざと誤字を入れて人間らしく見せる、架空の体験談や利用者の声をでっち上げる、といった「偽装」は、発覚したときに信頼を大きく損ないます。磨くとは、ごまかすことではありません。

事実と権利を確かめる

AIは、もっともらしい誤りを自信たっぷりに出すことがあります。数字、固有名詞、引用、仕様は、必ず元の情報で確かめましょう。また、生成した画像やデザインが既存の作品や商標に似ていないか、実在の人物を扱っていないかといった権利面の確認も欠かせません。

AIを使ったことの伝え方を考えておく

地域やプラットフォームによっては、AIで生成したコンテンツであることの表示が求められる場面も出てきています。隠すか明かすかの二択で考えるより、「どこにAIを使い、どこを人が判断し、誰が責任を持っているか」を説明できる状態にしておくことが、結果的にユーザーの信頼につながります。

量で勝負しない

AIを使えば、記事もページも大量に作れます。しかし、検索エンジンもユーザーも、量産されただけの薄いコンテンツには厳しくなっています。100本の平均的な記事より、10本の深い記事のほうが、長い目で見て選ばれ続けます。

磨く力そのものを失わない

AIに任せる範囲が広がるほど、人が「良し悪しを見分ける力」を鍛える機会は減っていきます。目利きの力が衰えれば、磨くこと自体ができなくなります。チームの中で判断の理由を共有し、レビューし合う習慣を持ち続けることが、磨く力を保つ一番の方法です。

関連判断の共有やレビューの仕組みづくりは、「AI時代のチームコミュニケーション」で詳しく取り上げています

磨くとは、小さな改善を積み重ねること

プロダクトを磨くという作業は、一度の大きな手直しでは終わりません。使ってみて気づいた違和感、レビューで出た指摘、ユーザーからの声。そうした小さな改善点を一つずつ拾い上げ、直し、確かめる。その積み重ねが、最終的に「ちゃんと作られている」という手触りになります。

だからこそ、改善点を流さずに管理することが大切です。チャットで「ここ気になる」と言ったきりの指摘は、たいてい忘れられます。一つひとつを課題として残し、誰が対応するのか、なぜその直し方を選んだのかを記録しておけば、磨く作業はチームの財産として積み上がっていきます。

関連改善点の書き方は「伝わるタスクの書き方」で、終わったあとの記録の残し方は「終わらせ方:完了の基準と、あとで見返せる記録の残し方」で紹介しています(連載「チームで使うタスク管理のコツ」)

GeckoFlagではこう磨ける

ここまでの7つの実践は、どのツールでも取り入れられます。一例として、セルフホスト型のプロジェクト管理ツールGeckoFlagでの運用を紹介します。

実践 GeckoFlagでの運用例
1 誰の、どんな場面かを決める決めた一文をプロジェクトの詳細(説明)に書いておきます。参加したメンバー全員が、同じ前提から始められます
2 初稿を素材として扱う「初稿をつくる」と「仕上げる」を別の課題に分けます。初稿ができただけで完了にならないようにします
3 一次情報を足すヒアリングや取材で得たことを、プロジェクトのWikiにまとめます。写真や資料はプロジェクトのファイルに置き、チームで使い回せるようにします
4 削る削った内容と理由を、課題のコメントに残します。あとから「なぜ消したのか」をたどれます
5 細部に意図を入れる「細部の仕上げ」を親課題にし、空のときの表示、エラー時の案内、読み込み中の見せ方などを子課題にして、1つずつ完了にします
6 自分たちで使う気づいた違和感は、その場で課題にします。管理者が課題タイプに「改善」を足しておき、優先度で直す順番を決めます。進み具合はカンバンボードで見ます
7 型と使わないものを決める語り口、使わない表現、AIに渡す指示文をWikiにまとめ、チーム全員が同じものを使います。「AIで作成」を使う場合は、管理者が出力テンプレートを登録しておくと、AIが作る課題の説明やWikiの書式をそろえられます
公開後の改善クライアントを「ゲスト」として招き、参加するプロジェクトだけを見せます。もらった指摘を、そのまま課題として受け取れます。ゲストも課題の編集やコメントができるため、社内の検討は別のプロジェクトに分けて置きます
GeckoFlagのカンバンボード。ステータスごとの行に課題のカードが並んでいる
改善点を課題にしておけば、どこまで直したかをカンバンボードで見渡せます(画面例:GeckoFlag)※GeckoFlagは15言語に対応しています。

GeckoFlagの「AIで作成」は、議事録やメモ、チャットのスクリーンショットなどから、課題・コメント・プロジェクト・Wikiの入力案をAIが提案する機能です。記事やデザインなど、世に出す制作物そのものを作る機能ではありません。使えるのは管理者が許可したユーザーだけで、提案はチェックした項目だけがフォームに入り、保存するのは人です。AIが出し、人が選んで責任を持つという、この記事の分担と同じ考え方で作っています。

お使いのサーバーに設置して使うので、制作中のプロダクトに関するやりとりも、自分たちの管理下で積み上げていけます(サーバーの管理は利用者の責任になります。「AIで作成」を使う場合、入力した文章や画像はAnthropicのAPIに送信されます)。リリースごとに開発者自身がセキュリティの検査を行い、その記録をセキュリティのページで公開しています(第三者による認証や監査ではありません)。価格は4,800円の買い切りで、メンバーが増えても追加の料金はかかりません(サーバー代は別途。「AIで作成」を使う場合は、AnthropicのAPIの利用料も別途かかります)。実際の画面は、デモで試せます。

まとめ

  • AIは、ためらわず積極的に使うべき道具。ただし、使うこと自体はもう差別化にならない
  • ユーザーが嫌うのはAIではなく、平均的で、誰のためでもなく、細部が雑な「手抜きと無責任の気配」
  • 選ばれるプロダクトには、一次情報、視点と判断、細部の意図、一貫性、作り手の責任がある
  • AIには素材づくりと検証を任せ、問いを立てる・選ぶ・責任を持つことは人が担う
  • 磨くとは、偽装ではなく価値を加えること。そして小さな改善を積み重ねること

AIがあればあるほど、最後に人が手をかけた部分が際立つ時代になりました。AIを使い倒し、空いた時間を「磨く」ことに注ぎ込む。それが、これからのプロダクトづくりの基本になっていくはずです。